第7回 6次産業、その最高の成功事例は?
執筆:松島 紀三男(まつしま きみお) 公開:
昨今、日本の農業再生の切り札として「6次産業」の育成が話題になることが多いですが、たまたま先日社内で「6次産業の成功事例が非常に少ない」ということが話題になりました。
いえいえ、そんなことはありませんよ。特定のビジネスに偏ってはいますけれども。
私見ですが、
「世界で最も成功している6次産業はワイン(ワイナリー)である」と断言できます。
フランスのシャンパーニュ、ブルゴーニュ、ボルドー等の銘醸地を筆頭に、カリフォルニア、オレゴン、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、アルゼンチン、南アフリカ、カナダ、その他枚挙に暇なく、世界中でそれぞれの土地に根ざした葡萄の生産、醸造、販売を個性豊かなワイン生産者が続けています。
また、それらの生産地では、単なる販売にとどまらず、ワイナリー・ツアーが大きな産業として定着、拡大しています。ワイナリーは風光明媚な地域に立地する場合も多く、周辺の自然環境や葡萄畑を含めた美しい景観の中で、ワイナリーの見学、併設レストランでの食事、ワインや料理も提供するワイン列車の運行等、これほど多彩な楽しみを満喫できる旅行はなかなかないでしょう。 これを「6次産業最高の成功事例」と言わずして、他にどんな成功事例が挙げられるでしょうか。
日本のワイン生産者(果実酒事業者)の7割超が黒字経営
それでは日本のワイン生産者の経営に目を転ずればどうなのでしょう。日本のワイン生産者(果実酒事業者)の7割超が営業黒字であり、ここ数年営業利益は微増傾向です(出所;国税庁『果実酒製造業の概況』)。全般的に決して利益率は高いとは言えず、課題は山積しているようですが「成功事例は非常に少ない」という否定的評価にはならないと考えます。
日本において、ワイナリー経営への新規参入は増加しており、近年、そのワインの質の向上はめざましいものがあります。しかし、日本のワイン産業では、まだまだモノづくりとしてのワイン生産、販売に偏っており、サービスとしての事業拡大の可能性がもっと拡がるといいなと思います。
グリーン・ツーリズムとしても、最も有望だと考えます。日本の場合、ワイナリーは全国各地にありますが、葡萄生産の適地として、冷涼で気温の寒暖差が大きく、日照量の豊富な地域が求められる関係上、北海道を除き、高原、山岳地域に立地していることが多いのです。そういうところは風光明媚な場所が多く、葡萄畑やワイナリーの建物も自然の景観とマッチして、観光地としても美しい場所が多いですね。
併設、または近隣のレストラインで地元のワインと食物による、地産地消の食の楽しみもありますし、温泉めぐりや登山、キャンプ等も楽しめます。
ワイナリー・ツアーはワインそのものだけでなく、食とのマリアージュ、野外コンサート、地域の観光等、裾野の広い経済効果が期待できるところも、6次産業として優れた潜在価値だと思います。
みなさんもお住まいの近場で、或いは旅行先のオプショナル・ツアーの一環として、6次産業の事例であるワイナリーを見学してみてはいかがでしょうか。
以下、個人的な好みで、おすすめのワイナリーを挙げておきますが、ごくごく一部で、全国にすばらしいワイナリーがたくさん存在しますよ。
山梨県、勝沼周辺「首都圏から気軽に行ける、すぐそこにあるワイナリー」
■中央葡萄酒 ミサワワイナリー
いちはやく世界に進出した中央葡萄酒。グレイスワインのブランドで知られる。キュベ・ミサワは幻の明野のミサワワイナリーは、北に八ヶ岳、西に南アルプス、南に富士山を借景に眼前に拡がる葡萄畑が美しい。試飲、見学に加え、併設のレストランで食事もできます。
■シャトー・メルシャン
勝沼の中心に位置。日本のワイン生産、普及、生産指導等、多大な貢献を果たしてきたメルシャンの勝沼醸造所。国際的にも受賞歴多数。併設の試飲できるショップ、レストランも魅力。秋の葡萄まつり、参加型の収穫祭等、イベントも多数。周辺にも、個性豊かなワイナリーが点在しています。
九州観光のついでにいかが
■安心院葡萄酒工房(「いいちこ」がつくるワイナリー)
焼酎の「いいちこ」で有名な三和酒類株式会社が地元宇佐市、安心院に造った、美しいワイナリー。別府、湯布院等、大分の観光地からも近く、宇佐神宮詣でのついでにどうでしょう。個人的には、日本のスパークリングワインでは、コスト・パフォーマンスも含め、ここが最高と思います。白ワインも美味しい。受賞歴多数。2014年のスパークリングワインも、見事、2016ジャパンワインチャレンジ、堂々の金賞。
北関東、栃木にある感動のワイナリー
■ココファーム・ワイナリー
指定障害者支援施設「こころみ学園」がつくったワイナリー。単なるワイナリーの見学ではなく、弊社が事務局を務める「人を大切にする経営学会」の企業視察先としても人気。
障がい者雇用の先進事例として多くの尊敬を集めるワイナリーです。人を大切にするだけでなく、ワインの質も超一流。二重三重の驚き、感動をもたらすツアーになるでしょう。
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